褒められて「そんなことないです」と返す人へ

すごいですね、と言われて、反射で「いやいや、そんなことないです」と返す。
心当たりがある人に向けて書きます。
先に言っておきます。この返事は、日本語としては正しいです。
問題はそこではありません。
正しい受け答えをしているあいだに、内側では別のことが起きています。
私は90日間の音声コーチングをやっています。
受ける前と受けた後に、同じ人へ同じ質問をして録音を残しています。7人分あります。
この記事では、その発言と、私が音声で話している内容だけを使います。
久田 晃「そんなことないです」は、日本語としては正しい返事です
謙遜は、この国では礼儀として扱われます。実際、この返事で場は荒れません。
相手も嫌な気持ちにはなりません。社会の中でちゃんと機能してきた言葉です。
だから、謙遜が悪いという話をするつもりはありません。
私が言いたいのは、その一言が向かっている先です。
自分が口に出した言葉は、声としてもう一度自分の耳に入ります。
頭の中でも、言う前に一度組み立てています。つまり、その言葉は脳にも耳にも二度通ります。
「そんなことないです」も同じです。
相手に向けて言っているつもりで、一番近くで聞いているのは自分です。
1出てくるのは、だいたい3つです
褒められた時、認められた時。反射で出る言葉は、たいてい次の3つに収まります。
- いやいや、そんなことないです
- たまたまです。運が良かっただけです
- いえ、まだまだです
3つとも、相手への否定ではありません。自分への否定です。
そしてこの3つが口癖になっている人は、結果が出た日ですら、頭の中で同じことを言います。
いやいや。たまたま。
まだまだ。次はダメかもしれない。
褒められた回数だけ、この言い方を練習していることになります。
相手が渡したものを、その場で捨てています
ここからが本題です。誰かがあなたを褒めた時、その人はあなたを認めています。
お世辞かどうかは、いったん置いておきます。
「そんなことないです」は、相手が渡したものを、受け取らずにその場で捨てる動作です。
もったいない、と私は思います。
自分をよく言ってくれる材料が、向こうから歩いてきているのに、玄関で追い返しているようなものだからです。
もう一つあります。渡した側は、気持ちよくはありません。
せっかく口に出したものを、目の前で否定されているからです。
謙遜のつもりが、相手の言葉を打ち消す形になっています。
受け取れないのには、理由があります
ではなぜ、捨ててしまうのか。ここには2つあります。
1調子に乗っていると思われるのが怖い
そのまま受け取ったら、慢心だと思われるのではないか。
調子に乗っていると見られるのではないか。だから、先に自分で否定しておく。
この気持ちは、よく分かります。ただ、受け取ることと威張ることは、まったく別です。
ありがとうございます、と言った人を見て、慢心していると思う人はまずいません。
2褒められると、次が怖くなります
もっと大きいのは、こちらだと思っています。
良かったですね、と言われると、次も同じことをしないといけない気がしてきます。
次も褒められるようなものを出さないといけない、と。
期待が、あなたを苦しめます。だから、期待が乗る前に「たまたまです」と言って下げておく。
防御としては、よくできています。
ただ、これを続けると、外から来た評価は一つも残りません。守るたびに、材料が減っていきます。
久田 晃自己肯定感が低い、の中身
言葉の整理をします。
自己肯定感とは、うまくいっていようが、ダメだろうが、今の自分でいいと思える考え方のことです。
何でもできる状態のことではありません。そちらは自己効力感のほうです。
低くなる原因を、性格や育った環境に求める説明が多いです。確かに影響はあります。
ただ、今日から扱えるところは別にあります。材料が来ても、受け取っていないことです。
受講前のインタビューで、俊平さんはこう話していました。
「シンプルに、今自分に自信がないっていうのが一番大きいですかね」
俊平さん・受講前
福丸さんは、もっと手前のことを言っていました。
「自分があんまり好きじゃないっていうのが、ずっとあるんです」
福丸さん・受講前
二人とも、周りから評価されていない人ではありません。
仕事をしていますし、人にも好かれています。それでも、こうなります。
入ってくる量ではなく、受け取る量の問題だからです。
1自信は、自分の中だけでは作れません
福丸さんは、受講後にこうも言っていました。
「自信ってどうやってつけるんや、みたいな。手本がないから、よくわからん」
福丸さん・受講後
自信は自分で作るものだと思われています。半分は合っています。
ただ、もう半分は外から来ます。人から言われた言葉、返ってきた反応。
それが材料です。
材料を毎回捨てている人は、自分の中の在庫だけで自信を作ろうとしていることになります。
だから、いつまでも足りません。
順番が逆だと、いつまでも乗りません
私が音声で必ず話していることがあります。
逆をやる人が、とても多いです。結果が出たら自分を認める。
うまくいったら受け取る。この順番だと、土台がいつまでも空いたままになります。
分かりやすいたとえがあります。自分に子供がいるとします。
勉強もしない。悪いことばかりする。
それであなたは、その子を大嫌いになりますか。
ならないはずです。成績や見た目で、大事にする量を変えたりはしません。
存在のほうは無条件で認めている。だから、厳しく言うこともできます。
それを、自分に対してやります。今の自分でいい。
でも、もっとよくなりたいからこれをやっている。
この形になると、失敗しても成功しても、土台の100%は動きません。
ここが空いたままだと、どれだけ結果を積んでも、乗る場所がありません。
だから、いくら成果を出しても足りない感覚が消えない人がいます。
まずは、ありがとうございますだけです
受け取る練習は、一言で足ります。
反射で「そんなことないです」が出る人は、そこを「ありがとうございます」に置き換えるところからです。
嬉しいです、でもいいです。素直に受け止める形になっていれば、言い方は何でも構いません。
それはお世辞かもしれない、と思う人もいます。かもしれません。
ただ、本当かどうかは相手にしか分からないことです。人の内心は、こちらでは動かせません。
動かせないものを疑うより、言われた言葉のほうを持っておいたほうが得です。
そして、言われたことは自分の長所として残しておきます。メモでも記録でも構いません。
1年続けると、自分のいいところだけが並んだものが手元に残ります。
1最初は、いやいやが出ます
いざその場になると、また「いやいや」が出ます。それで普通です。
39度の熱が出ると、汗が出ます。体温を元に戻そうとして、体が勝手にやっていることです。
人間には、元の状態に戻そうとする働きがあります。
新しい習慣や、今までと違う考え方が入ってくると、同じことが起きます。
元に戻ろうとする反応は、あなたが弱いから出るのではありません。体と脳の仕組みのほうです。
だから、できなかった日に自分を責める必要はありません。
そこで責めると、結局自己否定に戻ります。
久田 晃受け取れるようになると、外の反応が変わります
90日後の録音から出します。佐々木さんは、職場での関係をこう話しています。
「自分も過ごしやすくなりましたし、相手も、ある意味、自分という居場所を見つけてくれているという感覚はあります」
佐々木さん・受講後
麒麟さんは、職場を移る時にこう言われています。
「転職した時に、めちゃめちゃ辞めないでとは言われましたね」
麒麟さん・受講後
二人とも、90日で急に人望が湧いたわけではありません。
周りの人の見方は、前からそれほど変わっていないはずです。
変わったのは、それを自分のこととして受け取れるようになったところです。
同じ言葉でも、受け取った人の中にしか残りません。
受け取ると、次に同じことを言われた時に、それが2回目として積み上がります。
捨てていると、何回言われても毎回1回目です。
まとめ
今回は、褒められた時に「そんなことないです」と返してしまう話を書きました。
謙遜が悪いのではありません。受け答えとしては、何も間違っていません。
ただ、その言葉を一番近くで聞いているのは自分です。
外から来た評価をそこで毎回捨ててしまうと、材料が一つも残りません。
自己肯定感は、結果が出てから上がるものではありません。
先に土台があって、その上に行動と結果が乗ります。
順番が逆だと、いくら結果を積んでも乗る場所がないままです。
置き換えるのは、一言だけです。そんなことないです、から、ありがとうございます、へ。
受け取らないかぎり、材料はゼロのままです。
まずは、ありがとうございますから
最大120分。今の状態と、90日後にどうなっていたいかを一緒に整理します。
無理な営業はしません。顔出しも不要です。