「守れなかった」を「守れない人間」にすると、直す場所がなくなります

昨日、自分で決めたことを守れませんでした。
これは、その日に起きた出来事です。
ところが多くの人は、一晩でこれを言い換えます。
「自分は、決めたルールを守れない人間だ」。
出来事が、人間の性質に変わりました。
この言い換えが起きた瞬間に、直す場所がなくなります。
私は90日間の音声コーチングをやっています。
受講生が書いてくるワークを読んでいて、一番よく出てくるのがこの言い換えです。
そして自己否定の中でも、一番やっかいな形だと思っています。
久田 晃起きたのは1日分、決めたのは一生分です
まず、この2つは別のものです。
「昨日は守れなかった」。これは事実です。
誰が見ても、同じことを指します。
「自分は守れない人間だ」。これは事実ではありません。
解釈です。しかも、人格まで届いています。
私が音声で最初に話すのは、事実と解釈を分ける話です。
連絡が来ない。これは事実です。
嫌われた。これは解釈です。
ここまでなら、聞いたことがある人も多いと思います。
問題は、解釈が人間の性質にまで届いてしまうところです。
「今日は連絡が来なかった」で止まらない。
「自分は連絡が来ない人間だ」まで行きます。
起きたのは1日分の出来事です。
それなのに、決めているのは一生分の性質です。
この差が、あまりにも大きい。
まとめた瞬間に、3つの情報が消えます
出来事を人間の性質に言い換える作業は、要約です。
要約すると、必ず何かが落ちます。
落ちるのは、次の3つです。
- 日付 … いつのことだったか
- 回数 … 何回のうちの何回だったか
- 条件 … どういう時に崩れたか
この3つは、直すために必要な情報のほぼ全部です。
日付が残っていれば、いつから崩れたのかが分かります。
回数が残っていれば、10日のうち3日なのか9日なのかが分かります。
条件が残っていれば、崩れる場面を特定できます。
性質にまとめると、この3つが同時に消えます。
残るのは、自分についての一言だけです。
そして一言は、直せません。
「守れない人間だ」を修理するとしたら、どこに手を入れるのか。
手を入れる場所が、文の中に1つも残っていません。
数えられていない日があります
もう1つ、このまとめ方には偏りがあります。
守れなかった日は、そのまま集計に入ります。
守れた日は、入りません。
守れた日は、当たり前として処理されるからです。
だから、いくら守っても合計は動きません。
ある受講生が、受講前に出してきたワークにこう書いていました。
「自分は、自分で決めたルールを守れない人間だ」
受講生・受講前
本人が、一番重い思い込みとして挙げていた一文です。
ただ、同じ紙の別のところに、翌日の予定が書いてありました。
5時に起きる。6時にジムへ行く。
8時から8時半まで、学んだことを復習する。
その後は10時まで、考える時間にあてる。
SNSは絶対に見ない。
分単位です。
ジムについては、本人が「継続」と書いていました。
守れない人間だと書いた同じ手で、翌日の予定を分単位で立てています。
守れている行動のほうが、先にあるわけです。
それでも、ラベルは書き換わりません。
守れた日が、数える対象になっていないからです。
久田 晃ラベルには、終わりの日付が入っていません
出来事は過去形です。
「昨日は守れなかった」は、昨日で終わります。
ラベルは現在形です。
「守れない人間だ」には、終わりがありません。
いつまでそうなのかが、どこにも書いていない。
だから明日も、明後日も、同じ文がそのまま有効になります。
一度貼ると、更新されないまま残り続けます。
本人は、これを事実の報告だと思っています。
自分の性格を、正確に説明しているつもりでいます。
実際にやっているのは、古い出来事の要約を読み上げることです。
何年も前の集計結果を、今日の自分に当てています。
「いつも」が出てきたら、要約が起きています
同じ人が、もう1つラベルを書いていました。
「自分は、いつも誰かに頼ってきている人間だ」
受講生・受講前
ここに「いつも」が入っています。
この語が出たときは、たいてい要約が起きています。
実際に頼った場面は、数えられる回数しかありません。
それを「いつも」でまとめると、回数が消えます。
消えたあとは、量ではなく性質の話になります。
もう1つ、この一文には見落としがあります。
頼ってきたこと自体は、事実かもしれません。
ただ、それは弱さの証拠ではありません。
頼れる相手がいたということは、関係を作れていたということです。
誰にも頼れないまま20代を終える人のほうが、はるかに多い。
同じ出来事が、まとめ方ひとつで正反対の意味になります。
そして本人は、悪いほうのまとめ方だけを採用しています。
直す場所を、出来事の側に戻します
では、どうするか。
やることは1つです。
人格の言葉が出たら、元の出来事に戻します。
「自分は守れない人間だ」が出たとします。
そこで私は、3つを書き足してもらっています。
- いつ守れなかったか
- 直近の10日のうち、何日そうだったか
- どういう場面で崩れたか
書き足すと、たいてい話が変わります。
毎日ではなく、週末だけだった。
全部ではなく、10日のうち3日だった。
疲れている日の夜だけ崩れていた。
ここまで出れば、直す場所が見えます。
週末の夜の過ごし方を変えればいい、という話になります。
「守れない人間だ」のままでは、ここに一生たどり着きません。
性質を直す方法は、この世に存在しないからです。
1実況にすると、まとめが止まります
もう1つ、音声で伝えている方法があります。
自分のことを、他人の実況として書くやり方です。
「自分はダメだ」ではありません。
「この人は今日、決めたことを1つ飛ばした」です。
実況には、評価が入りません。
評価が入らないので、性質にまとまりません。
そのぶん、次に何をするかをすぐ考えられます。
久田 晃まとめ
今回は、出来事を人間の性質に言い換えてしまう話を書きました。
守れなかったのは、1日ずつの出来事です。
それを「守れない人間だ」にまとめると、直す場所が消えます。
消えるのは、日付と回数と条件です。
この3つは、変えるために必要だった情報のほうです。
そのうえ、まとめには守れた日が入っていません。
だから、いくら守っても評価は動きません。
やることは、出来事の側に戻すことだけです。
性質は直せませんが、週末の夜なら直せます。
直すのは、性質ではなく出来事のほうです。
まとめる前に、数え直す
最大120分。今の状態と、90日後にどうなっていたいかを一緒に整理します。
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